1 生命の本

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「ありがとう。おかげで元気(げんき)(もど)ったよ」 体温が回復(かいふく)し、歩く気力(きりょく)を取り戻したした私は毛布を持って立ち上がり、再び森の出口へ向けて歩き出した。 薄茶色(うすちゃいろ)でむくむくの新しい友達は、くんくんと鼻を()らして私の後に付いて来てくれる。 「よし、おっきいわんちゃん。お前の名前(なまえ)は今から“マシュー”よ」 『わん!』 「よし! マシューおいで!」 首輪(くびわ)はしていないが、野良犬(のらいぬ)では無さそうな、 人に馴れすぎている友達(こいぬ)に、私は勝手(かって)に名前を付けて一緒に森の坂道を(のぼ)る。 仲間が出来て一転(いってん)、歩くのが楽しくなった私は“マシュー”を連れて(まば)らな月明(つきあ)かりの下を数倍(すうばい)速度(そくど)(すす)んでいるような気がした。 それから十分(じっぷん)も歩いただろうか、私たちは(つい)に森を()けて山頂(さんちょう)(ひら)けた草原(そうげん)へと辿(たど)り着いた。
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