2 オゼ

4/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
可愛(かわい)らしい弥月(みづき)さん。よろしくお願いいたします。 (わたくし)今宵(こよい)、あなた様が“こちら"へ()って()られることを(うかが)い、お(むか)えに(まい)りました“こちらの(がわ)”の担当者(たんとうしゃ)で、 先ほどもご紹介(しょうかい)させていただいた魔法使(まほうつか)いの“オゼ”と(もう)します。 私の仕事は、弥月(みづき)さん……あなたを、無事(ぶじ)に“()こう”までエスコートすることでございます。 どうか(おそ)れることなく、私めと御一緒(ごいっしょ)()ずはこの山を()りて下さいますよう、お願いいたします」 私は眼前(がんぜん)に広がる風景を(なか)(あき)れたような心持(こころも)ちで見つめながら、"オゼ"の言葉に無言で(うなづ)同意(どうい)をした。 「それでは(まい)りましょう」 手入(てい)れの()(とど)いた白髪混(しらがま)じりのあごひげを軽くひと()でして、"オゼ"はゆっくりと私を(みちび)くように歩き始めた。 そして、私の横に“お(すわ)り”している子犬にむかって 「さあ"マシュー"お前もふらふらせずに、しっかりと私たちのあとに付いて来るんだよ」 と、(やさ)しい口調(くちょう)(かた)りかけた。 『わん』 巨大な子犬(マシュー)は、すぐにその言葉に反応(はんのう)して、(うれ)しそうに尻尾(しっぽ)を振りながら、彼の(うし)ろをとことこと付いて行く。 (かれ)らの様子は、()い犬と主人(しゅじん)そのもので、 私はその光景(こうけい)何処(どこ)(なつ)かしさに()た、不思議(ふしぎ)感情(かんじょう)(おぼ)えた。 そして、同時に何故(なぜ)彼がマシュー(わたしがつけた名前)()っているのか、理解(りかい)できずに困惑(こんわく)した。 「ねえ、どうしてあなた、私がこの子に付けた名前を知っているの? もしかして私たちの様子をずっと何処(どこ)かから(うかが)っていたの?」 また少し(こわ)くなった私は、立ち止まってオゼに質問(しつもん)した。 「おや? 弥月(みづき)さんも(すで)に彼から教わっていたのですね。そうです(マシュー)は、とても(かしこ)くとても(あたた)かでしたでしょう」 何を言っているのだろう? 全く理解できない。何かをはぐらかす目的からなのか? ……それとも……彼ら(オゼ)は私たちとは少し(ちが)っている……からなのかしら?
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!