2 オゼ

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荒唐無稽(こうとうむけい)な夢のなかで、同じく(どう考えても)荒唐無稽な登場人物(とうじょうじんぶつ)との会話の内容に(こだわ)ってもどうにもならないと分かっていながら、私はいらいらとした口調で“ちょっと素敵(すてき)魔法(まほう)を使う紳士(しんし)”に向かってまくし立てた。 「何を言っているのか全然分からない。あなたちょっと(へん)な人よね、私のことも“(おさない)い子供”だなんて、(いく)らなんでも失礼(しつれい)じゃない?!」 「そうですねえ……(たし)かに私も今夜“()った”のは大人(おとな)(ヒト)だと(うかが)ったのですが、それは少し(へん)ですねえ……」 (わけ)のわからない苛立(いらだ)ちを(まぎ)らそうという私の(こころ)みは、結局(けっきょく)いつまでも()み合うことの無さそうなオゼ(素敵な魔法使い)返答(へんとう)()(なが)された。 私は(あきら)めてため(いき)()いた。 「まあ、その辺はあとで彼らに聞いてみれば分かるでしょう」 オゼは、また自分だけ分かっているようなことを(つぶや)いて私をげんなりとさせたが、もう私は『どうせ夢なんだから、多少(たしょう)訳が分からなくても(ほう)っておけばいいや』と思い直すことにした。 そのとき 「やあ、(かれ)らですよ。ご挨拶(あいさつ)をしましょう」 頭越(あたまご)しで私のうしろを()(かえ)り、オゼは何かに会釈(えしゃく)をした。 なんだろう。今度はいったい。 背後(はいご)から何者(なにもの)かの(せま)気配(けはい)がある。 緊張(きんちょう)して私がゆっくり()(かえ)ると、そこには虹色(にじいろ)不思議(ふしぎ)毛並(けな)みのオオカミと金色毛皮(きんいろ)のうさぎがいた。
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