4人が本棚に入れています
本棚に追加
……本当に、なんて素敵な夢なのかしら……だけど……
この"なにが起こっても不思議じゃない、幻想の世界"は、私のまわりに居座り続け、鏡の前の"私に似た子供"は、翌朝も私の顔を困惑に満ちた表情で見詰め返して来た。
どんなに強く念じてみても、目が覚めるような気配はない。
まあ、別に、どうしてもいま起きなくちゃいけない用事も無いわけだし、寝て起きるような夢もあるんだろうけど……
夢だと既に気付いているのに、自分で目を覚ませられないなんて、なんだか妙な違和感がある。
……………………
これは、少しだけ怖い夢、なのかも知れない……
一瞬、そんな邪念が脳内を巡り、私を不安に落とそうとする。
でも……
たしか…………
そうだ。
こういう夢は、大概すぐに忘れてしまうものだったはずだ………………
………………
気がつくと、鏡の前の少女は立ち竦んだまま、ぱちくりぱちくりと何度も瞬きを繰り返していた。
そうなのだ。
この夢での私は幼くて懐かしい子供の頃の自分だった。
私は、
『折角、楽しい夢を見ているんだったら、忘れてしまう前にもっとここで自由に、楽しく過ごすことを考えてみよう』と、
大分頼りない見てくれに戻ってしまった自分に苦笑しながら、改めてそう思いなおした。
……それから
次の日も、そしてそのまた次の日も、私は不思議な夢の世界を満喫した。
暖かくて、どこか懐かしい匂いのする、この場所は一体何処なのだろう?
“こちら側”に居るあいだ、私の寝食の世話を焼いてくれる“オゼ”は、時々魔法を見せて私の心を楽しませてくれたり“こちらの国”の面白いお話を色々と教えてくれる。
これで本当に私が子供だったなら、きっと何年も退屈しないで暮らせるだろう。
何でも知っている"オゼ"の言うには、私が“向こう(?)”へ帰るには時間が少し必要だから、私は本当に"オゼ"に出会えて良かったと思った。
“この国”では、私のように時々何かが“降ってくる”らしい。
四日前にはリスが十匹“降って来た”そうだが、オゼの言葉は「彼らは言葉を喋られなくて困りました」というもので、さっぱり意味が分からなかった。
……
まあ、わからないけど、退屈はしない。
ここにいて理解かったことは、オゼに悪意の全くないことと、本当に私を助けようとしてくれていること。
それだけではあったが、私を落ち着かせるには十分でもあった。
“もとの世界へ帰"るまでのあいだに、オゼは私の身体を戻す方法も一緒に探してくれるという。
既に三日目の朝を迎えて、手足ひとつも思い通りに動かせない(いつまでも子供のままの)私はオゼの言葉に期待して待つ以外、何も自分で出来ることは無いと悟っていた。
最初のコメントを投稿しよう!