3 宝の地図

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……本当に、なんて素敵(すてき)(ゆめ)なのかしら……だけど…… この"なにが起こっても不思議(ふしぎ)じゃない、幻想(げんそう)の世界"は、私のまわりに居座(いすわ)り続け、(かがみ)の前の"私に()た子供"は、翌朝も私の(かお)困惑(こんわく)()ちた表情(ひょうじょう)見詰(みつ)め返して来た。 どんなに(つよ)く念じてみても、目が()めるような気配(けはい)はない。 まあ、(べつ)に、どうしてもいま()きなくちゃいけない用事も無いわけだし、()()きるような夢もあるんだろうけど…… 夢だと(すで)気付(きづ)いているのに、自分で目を()ませられないなんて、なんだか(みょう)違和感(いわかん)がある。 …………………… これは、少しだけ怖い夢、なのかも知れない…… 一瞬(いっしゅん)、そんな邪念(じゃねん)脳内(のうない)(めぐ)り、私を不安に()とそうとする。 でも…… たしか………… そうだ。 こういう夢は、大概(たいがい)すぐに(わす)れてしまうものだったはずだ……………… ……………… 気がつくと、鏡の前の少女(わたし)は立ち(すく)んだまま、ぱちくりぱちくりと何度(なんど)(まばた)きを()り返していた。 そうなのだ。 この(せかい)での私は(おさな)くて(なつ)かしい子供の頃の自分だった。 私は、 『折角(せっかく)、楽しい夢を見ているんだったら、(わす)れてしまう前にもっとここで自由に、楽しく()ごすことを考えてみよう』と、 大分(だいぶん)(たよ)りない()てくれに(もど)ってしまった自分に苦笑(くしょう)しながら、(あらた)めてそう思いなおした。 ……それから 次の日も、そしてそのまた次の日も、私は不思議(ふしぎ)な夢の世界を満喫(まんきつ)した。 (あたた)かくて、どこか(なつ)かしい(にお)いのする、この場所は一体何処(どこ)なのだろう? “こちら側(ゆめのなか)”に()るあいだ、私の寝食(しんしょく)世話(せわ)()いてくれる“オゼ”は、時々魔法(まほう)を見せて私の心を楽しませてくれたり“こちらの国(ゆめのなか)”の面白(おもしろ)いお(はなし)色々(いろいろ)(おし)えてくれる。 これで本当に私が子供だったなら、きっと何年も退屈(たいくつ)しないで()らせるだろう。 何でも知っている"オゼ"の言うには、私が“向こう(?)”へ帰るには時間が少し必要だから、私は本当に"オゼ"に出会(であ)えて()かったと思った。 “この国”では、私のように時々何かが“()ってくる”らしい。 四日前(よっかまえ)にはリスが十(ひき)()って来た”そうだが、オゼの言葉(ことば)は「(かれ)らは言葉を(しゃべ)られなくて(こま)りました」というもので、さっぱり意味が分からなかった。 …… まあ、わからないけど、退屈(たいくつ)はしない。 ここにいて理解()かったことは、オゼに悪意(あくい)(まった)くないことと、本当に私を(たす)けようとしてくれていること。 それだけではあったが、私を()()かせるには十分(じゅうぶん)でもあった。 “もとの世界へ帰(わたしがめざめ)"るまでのあいだに、オゼは私の身体(からだ)(もど)方法(ほうほう)一緒(いっしょ)(さが)してくれるという。 (すで)に三日目の(あさ)(むか)えて、手足(てあし)ひとつも思い通りに(うご)かせない(いつまでも子供のままの)私はオゼの言葉に期待(きたい)して()以外(ほか)、何も自分で出来ることは無いと(さと)っていた。
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