3 宝の地図

6/10
前へ
/59ページ
次へ
おかしなポーズをしたまま林の中でじっとしている少年の姿(すがた)があまりに滑稽(こっけい)で、思わず私は彼に向かって声をはった。 「ねえ」 「…………」 「聞こえてないの?」 私の声が大きくなると、少年はようやく視線(しせん)だけを動かして 「バレエ」 とだけ(こた)えた。 ……なにこいつ。 「バレエ? でもじっと()まっているだけじゃない」 「この先の()り付けを知らないんだ」 「へんなの。それでずっと()まっているの?」 「そうだよ……(わる)いか?」 そういって彼は、私を見下(みくだ)すよう“つん”とした口をした。生意気(なまいき)な子だ。 「ふうん。やっぱり(へん)な子。でもバカみたいとは思わない。そういう人、私、他にも知っているから」 「生意気(なまいき)(やつ)だなあ、ぼくよりずっと(ちい)さいくせに」 なんて口のきき方をする子なの? 生意気(なまいき)なのはあんたの方よ。私が気を(つか)って話しているのに、本当は私のほうがずっと年上(としうえ)なのに! 私は(みょう)(はら)が立って、口を()いて出そうになる(いか)りの言葉(ことば)を、次々(つぎつぎ)()()んではため(いき)()いた。 無意味(むいみ)な時間はそのまま何分も継続(けいぞく)して、(はた)から見ればじたばたとしているだけの私を少年は遠目(とおめ)(なが)めていたが不意(ふい)に 「お(まえ)一昨日(おととい)オゼに(ひろ)われた子だろ」 と言って私を(おどろ)かせた。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加