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おかしなポーズをしたまま林の中でじっとしている少年の姿があまりに滑稽で、思わず私は彼に向かって声をはった。
「ねえ」
「…………」
「聞こえてないの?」
私の声が大きくなると、少年はようやく視線だけを動かして
「バレエ」
とだけ答えた。
……なにこいつ。
「バレエ? でもじっと止まっているだけじゃない」
「この先の振り付けを知らないんだ」
「へんなの。それでずっと止まっているの?」
「そうだよ……悪いか?」
そういって彼は、私を見下すよう“つん”とした口をした。生意気な子だ。
「ふうん。やっぱり変な子。でもバカみたいとは思わない。そういう人、私、他にも知っているから」
「生意気な奴だなあ、ぼくよりずっと小さいくせに」
なんて口のきき方をする子なの? 生意気なのはあんたの方よ。私が気を遣って話しているのに、本当は私のほうがずっと年上なのに!
私は妙に腹が立って、口を吐いて出そうになる怒りの言葉を、次々と呑み込んではため息を吐いた。
無意味な時間はそのまま何分も継続して、端から見ればじたばたとしているだけの私を少年は遠目に眺めていたが不意に
「お前、一昨日オゼに拾われた子だろ」
と言って私を驚かせた。
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