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少年の大声に、思わず後ろを振り返って見ると、そこには一匹の猫が事も無げに座っていた。
品種は、スコティッシュフォールドだろうか。
灰色の地に白や海老茶の混じった不思議な毛色をしている。
「こいつ、鳥かごの小鳥を狙っていたんだ」
玄関から"やれやれ"という表情をして顔を出したリードが、疲れたような声で言った。
「あら、そうだったの。困った子ね」
内心少しどきどきとしながらも、私は澄ました表情でへんてこな模様の猫に話しかけた。
私の声が聞こえたのか、べつにそういうわけではないのか。
"猫"は、なんとも退屈そうにあくびをしてから身体を伸ばすと、その場でざりざりと毛づくろいを始めた。
そして、たっぷりと時間をかけたブラッシングが終わると、ようやく私たちの視線に答えるように
『にゃん』
と、ひと声。にんまりとした不思議な顔で鳴いた。
私とリードは、悪びれない"猫"の泰然自若とした様子に、ついつい可笑しくなってきてしまって、ふたりで顔を見合わせ笑い合った。
『くうん』
『にゃあ』
「見ろよ、マシューもあいつを気に入ったらしいぞ」
リード少年の言葉のとおり、二匹に増えた動物たちは互いに鼻をくんくんさせて必要な挨拶を簡単に済ますと、すぐに庭中を一緒に駆け回って遊び始めている。
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