5 トンボ広場

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5 トンボ広場

その日の夕食はオゼ特製(とくせい)絶品(ぜっぴん)シチューだった。 いつも(こま)ったような表情(ひょうじょう)をしているこの家の(あるじ)は、私が勝手(かって)に家の中へ“()()んだ”見知(みし)らぬ少年を(こころよ)()()してくれた。 ダンスの得意(とくい)な少年"リード"は夕食後もしばらく家に(とど)まって、私たちはオゼに“(たから)地図(ちず)”についての色々(いろいろ)な話をした。 片付(かたづ)けの()んだ食卓(しょくたく)の中央に、小さな紙切(かみき)れを二枚(にまい)広げて、そこに(しる)された難解(なんかい)文書(ぶんしょ)辞書(じしょ)すら()かずにオゼはすらすらと()(すす)んでいく。 「ふむ、なるほど。これは(ふる)い“遺構(いこう)”の(よう)なものの()る場所への道筋(みちすじ)(しる)された地図のようですね。 (やま)(うみ)位置関係(いちかんけい)から推察(すいさつ)すると一枚(いちまい)目がこの(くに)東側(ひがしがわ)半分(はんぶん)(あらわ)していて、もう片方(かたほう)目的地(もくてきち)周辺(しゅうへん)拡大図(かくだいず)でしょう。 一枚(いちまい)目のこの部分を見やすくしたものが、ふたつ目の地図で、私の家は大体(だいたい)この(あた)り……(よう)するに、このへんの地図(ちず)ですね。これは」 「このへんの地図(ちず)……? てことはその“イコウ”は、この(ちか)くにあるの?」 「そういうことになりますね。見た(かぎ)りでは……子供の(あし)で、半日(はんにち)くらいの距離(きょり)でしょうか」 「(たから)もの、あると思う?」 「どうでしょう。この部分(ぶぶん)に『あなたは見つける』と()いてはありますが、それが一体(いったい)どんなものなのか、私には()かりませんね」 オゼの示したその場所には、意味不明(いみふめい)単語(たんご)がずらりと(なら)んでいる。 どうしてこれが『あなたは見つける』と読めるのか、私には理解(わか)らなかった。
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