4人が本棚に入れています
本棚に追加
5 トンボ広場
その日の夕食はオゼ特製の絶品シチューだった。
いつも困ったような表情をしているこの家の主は、私が勝手に家の中へ“連れ込んだ”見知らぬ少年を快く持て成してくれた。
ダンスの得意な少年"リード"は夕食後もしばらく家に留まって、私たちはオゼに“宝の地図”についての色々な話をした。
片付けの済んだ食卓の中央に、小さな紙切れを二枚広げて、そこに記された難解な文書を辞書すら引かずにオゼはすらすらと読み進んでいく。
「ふむ、なるほど。これは古い“遺構”の様なものの在る場所への道筋が記された地図のようですね。
山や海の位置関係から推察すると一枚目がこの国の東側の半分を表していて、もう片方が目的地周辺の拡大図でしょう。
一枚目のこの部分を見やすくしたものが、ふたつ目の地図で、私の家は大体この辺り……要するに、このへんの地図ですね。これは」
「このへんの地図……? てことはその“イコウ”は、この近くにあるの?」
「そういうことになりますね。見た限りでは……子供の足で、半日くらいの距離でしょうか」
「宝もの、あると思う?」
「どうでしょう。この部分に『あなたは見つける』と書いてはありますが、それが一体どんなものなのか、私には分かりませんね」
オゼの示したその場所には、意味不明な単語がずらりと並んでいる。
どうしてこれが『あなたは見つける』と読めるのか、私には理解らなかった。
最初のコメントを投稿しよう!