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……二人の会話が続くうち、
少年の言葉の中では“遺構”が何時の間にか“遺跡”に置き換わっていた。
私は、その横顔をぼんやりと思い出しながら、原生林の中にある“遺跡”とは果たしてどのようなものだろうかと、目を閉じてその姿を想像してみた。
……密林にひっそりと佇む、奇妙な石像や蔦に覆われた巨大な柱や仏塔が建ち並ぶ秘境の美しい神殿。
何処かから、野鳥の鳴く声が聞こえて来て、見たこともない猿が蔓を伝って右へ左へ飛び交っている。
“大切な遺跡”を守るガーディアンである彼らは、不用意に近付こうとする私たちのような愚か者に対して、けたたましい奇声を発するなどの威嚇行動によって、それ以上の侵入は許されないと警告する。
……森に囲まれた“遺跡?”というと、そんなイメージだろうか。
***
「もしかすると、昔の防空壕跡かも知れませんね。
私もあの辺は滅多に行きませんし、子供には危険ですから近付いてはいけませんよ」
しばらくの間、食器の片付けなどをしていたオゼが、ダイニングテーブルの上で想像を膨らませていた私の好奇心に釘を刺した。
「ぼうくうごう?」
「はい。
あの場所に“遺跡”があるという話は私も聞き及んだことはないのですが、あの辺には"それ"が幾つか残っているのです」
「ふうん。そんなのが、あるんだ……」
「何十年も放ってあるものなので、無闇に中へ入ったりすると天井が崩れたり、有毒なガスが溜まっている場合もありますから、本当に危険なので防空壕には絶対に入ってはいけませんよ」
「うん。わかった」
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