5 トンボ広場

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……二人の会話(はなし)が続くうち、 少年(リード)言葉(ことば)の中では“遺構(いこう)”が何時(いつ)()にか“遺跡(いせき)”に()()わっていた。 私は、その横顔(よこがお)をぼんやりと(おも)い出しながら、原生林(げんせいりん)(なか)にある“遺跡(いせき)”とは()たしてどのようなものだろうかと、目を()じてその姿(すがた)想像(そうぞう)してみた。 ……密林(みつりん)にひっそりと(たたず)む、奇妙(きみょう)石像(せきぞう)(つた)(おお)われた巨大な(はしら)仏塔(ぶっとう)()(なら)秘境(ひきょう)の美しい神殿(しんでん)何処(どこ)かから、野鳥(やちょう)()く声が聞こえて来て、見たこともない(さる)(つる)(つた)って右へ左へ飛び交っている。 “大切(たいせつ)遺跡(いせき)”を(まも)るガーディアンである(かれ)らは、不用意(ふようい)近付(ちかづ)こうとする私たちのような(おろ)(もの)に対して、けたたましい奇声(きせい)(はっ)するなどの威嚇行動(いかくこうどう)によって、それ以上(いじょう)侵入(しんにゅう)(ゆる)されないと警告(けいこく)する。 ……(もり)(かこ)まれた“遺跡(いせき)?”というと、そんなイメージだろうか。 *** 「もしかすると、(むかし)防空壕跡(ぼうくうごうあと)かも知れませんね。 私もあの(へん)滅多(めった)に行きませんし、子供には危険(きけん)ですから近付(ちかづ)いてはいけませんよ」 しばらくの(あいだ)食器(しょっき)片付(かたづ)けなどをしていたオゼが、ダイニングテーブルの上で想像(そうぞう)(ふく)らませていた私の好奇心(こうきしん)(くぎ)()した。 「ぼうくうごう?」 「はい。 あの場所に“遺跡(いせき)”があるという話は私も()(およ)んだことはないのですが、あの(へん)には"それ"が(いく)つか(のこ)っているのです」 「ふうん。そんなのが、あるんだ……」 「何十年(なんじゅうねん)(ほう)ってあるものなので、無闇(むやみ)に中へ入ったりすると天井(てんじょう)(くず)れたり、有毒(ゆうどく)なガスが()まっている場合(ばあい)もありますから、本当に危険(きけん)なので防空壕(ぼうくうごう)には絶対(ぜったい)に入ってはいけませんよ」 「うん。わかった」
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