3 宝の地図

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3 宝の地図

昨夜の(ゆめ)の動物たちと思わぬ再会(さいかい)()たした私は、オゼの(うで)(かか)えられて自分の背丈(せたけ)より大きいオオカミの背中に()せられると、空を飛ぶような(おどろ)くべき(はや)さで走る(けもの)たちと(とも)に山を下った。 野生的(やせいてき)(たくま)しく、(うつく)しい(にじ)色の毛皮を持ったオオカミは少し(おび)えた私の(ほお)に友好的な挨拶(あいさつ)をして、夢幻(むげん)(かがや)く魔法の道を(やみ)を切り()いて()ける。 私は不思議な幸福感(こうふくかん)()き立って、(かぜ)に行き()ぎる風景(ふうけい)に、ただただ目を見張(みは)っていた。 気が付いたときには、私は人家(じんか)(なら)(ふもと)集落(しゅうらく)到着(とうちゃく)していて、(いま)見た景色(けしき)感想(かんそう)をまるで子供のように後から(おく)れてやって来たオゼに向かって、はしゃいだ声で報告(ほうこく)していた。 ……だけど…… 私はそのとき、本当に自分が子供だったということには、気が付いてはいなかった。 ※※※ 翌朝(よくあさ)、オゼの家で見るからに魔法使(まほうつか)いの部屋にありそうな古典的(こてんてき)なデザインの(かがみ)を見せられた私は、そこに(うつ)ひとりの少女(じぶん)の姿を(みょう)納得(なっとく)して(なが)めていた。 (むかし)住んでいた家の、黄色(きいろ)文房具箱(ぶんぼうぐばこ)に入っていたハサミで、母に切って(もら)っていた(ころ)と同じ。 人形(にんぎょう)みたいな"おかっぱ"頭に小さくて(たよ)りない手足。これは小学校に入学する少し前の“おもいでのなかのわたし”そのものの姿だった。 これまで(はなし)()み合っていなかったのも、(やさ)しいオゼが巨大(きょだい)に見えたのも、全てこの小さい体のためだったのだ。 なんだ、私が小さかったんだ。可愛(かわい)いマシューも普通(ふつう)子犬(こいぬ)。 ちっとも不思議(ふしぎ)じゃないじゃない。
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