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4 レオナルド
円錐形のとんがり屋根で、いかにも魔法使いが住んでいる。という雰囲気のオゼの家は、巨大な惑星が浮かぶ奇妙な星空を見た山頂の草原から南東へ下った、山腹の集落の外れにある。
眼下に遠く港町を見晴らす、展望台のようなこの場所へ、私は虹色に輝く美しいオオカミの背中に乗ってやってきた。
大きくて強く、安らぎに満ちた温かい背中は、私の恐れを瞬く間に消し去り、私を安全なこの場所まで送り届けると、すぐにまた森の中へと消えていった。
オオカミと共に私を迎えた聡明で小さな金色のうさぎ。
夢の中に見る、もうひとつの夢。
彼らはあのとき、夜空に何を見ていたのだろう。
もういちど……私は彼らに会うことは出来るだろうか?
***
『わんっ わんわんっ』
バレエ少年のリードを連れてオゼの家まで帰って来ると、突然それまで二人の後ろを大人しく歩いていたはずの子犬のマシューが、何かに向かって激しく吠え立てながら、矢のような速さで、そのまま家の中へ駆け込んで行ってしまった。
「どうしたの、マシュー?」
「見ろ。扉が開いているぞ」
驚いてその場に立ち止まった私に、リードが玄関を指差し小声で言った。
扉を自分で開けることの出来ない子犬のマシューより先に家の中に入った誰かがいる。
今は、まだ正午過ぎ。日の高い時刻に帰宅することのないこの家の主ではない。
……それでは誰が、開けたのだろう?
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