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再会の時を待つこともしない。
どうせ会えるのだから。
だって、運命だ。
あの人に再会したのは、またしてもウィ―ンのシェーンブルン宮殿。ぼくの運命はこの後、違った形を取りたがるようになってしまった。
もうすでに、更に美しくなっていたあの人はぼくの演奏を快く聴いてくれて、こう言ったんだ。
「一緒に作曲をしてみましょう」
五日間。あの人とぼくは作曲を二人でおこなうことにした。
初めての共同作曲。
心は通い合い。
愛が繰り返し。
微笑みを絶やさず。
お互いの耳と心を満たした。
外ではフランス革命が人々の口から、そして魂から叫ばれていた。
プラハで体調を崩し薬を飲むようになったぼくは、あの人のためとぼく自身のために、「レクイエム」に取り組んだ。
もう失うものはない。
聖職者も追っ払い。
自分の浪費癖はさておいて、薄給と愛と天性と。
ああ、なんて人生なのだろう。
ぼくは途中で「レクイエム」も放り出し、ぼくはあの人との協奏曲を想いながら、この世の最後を迎えることにした。
そうこれが、ぼくとあの人との愛だ。
愛し合う二人の叶うこともなく。そして、叶う愛だった。
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