ご主人

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年の暮れ、大晦日を迎えた。 毎年、この日は自宅で一人パーティーをするのが恒例行事となっていた。 ダイニングテーブル代わりのこたつの上には、鍋やお刺身や焼き鳥と自分の好きなものだけを並べる。 普段はあまりお酒は飲まないが、この日ばかりは家でゆっくりとお酒を嗜みながら新年を迎えることにしている。 自分の料理を並べ終えセットを完了させると、両親の仏壇にも日本酒と御飯を供えた。 ― 今年も一年無事に過ごせました。来年も宜しくね。- そんな思いを亡くなった両親に伝える。 目を閉じながら手を合わせていると、台所からシュンシュンっと鍋が音を立てている事に気付く。 「あ、そろそろ出来たかな」 台所に向かい、鍋の火を切った。 蒸しあがった鶏のササミ肉を細かく割いて、お気に入りだったお皿に乗せる。 私はそれを両親の仏壇の隣にある写真立ての前に置いた。 「朔太郎、これ好きだったよね。大晦日だから特別にね」 写真の中の朔太郎は、笑って吠えてくれたような気がしていた。
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