朔太郎

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休日にはほとんど家にいるのがワシのご主人である。 朝起きてくると、この季節はまず居間のこたつにスイッチを入れる。 ご主人が台所へお湯を沸かしに行っている間、ワシは静かにその時を待っている。 「うー、寒い寒い」 いつもご主人が朝に飲んでいる湯気の立った黒い液体、白い小さなマグカップを持って戻ってきたこの瞬間がタイミングである。 ご主人はこたつに入るとじんわりとした温もりで体の半身を満たされていった。 しかし、朝の寒さに冷え切った足先は温まるにはなかなかの時間を要する。 「あー、朔太郎。それめちゃくちゃ暖かいわ」 こたつの中に伸びるご主人の足に、ノシっとフカフカしたお腹から乗っかる。 ― 毛皮も肉球もない寒がりのご主人に出来ることはこれ位しかないけどの ― こたつの中とご主人の足先がしっかり温まるまで、 こうしているのが最近の日課になっている。
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