朔太郎

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そろそろ新年というものを迎えそうなこの時期。 家の中ではご主人が大掃除を始めている。 ワシは邪魔にならないよう、こたつの中で身をひそめていた。 スイッチが入っていなくても、しばらくジッとしていれば意外と暖かくなってくるものである。 バタバタとした騒々しさを遠くに聞きながら、少しばかりうたた寝をしていると突然ガタンという物音で意識を現実へと戻された。 ― あれ、なんかこたつの中なのに明るくないかの - 気付くと天板とふとんが外されようとしていた。 先程までの暖かさを求め、ワシは無意識にふとんにしがみつこうとする。 ― ご主人、まだ春になっとらんぞ…     こたつ片付けるには早くないかの… ― ワシの抵抗と意見も虚しく、こたつは丸裸にされていった。 仕方がないので、晴れている縁側の方へ移動する。 ご主人は掃除の途中だったがバタバタと今度は外へと出て行った。
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