朔太郎

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ご主人は3本目の缶を開けようとしている所だったが、ワシは傍へ駆け寄りご主人の部屋着の裾を引いた。 「どうした朔太郎。ゴハンはもう食べたでしょ」 違う違うという意思を伝えようと尚もご主人の裾を引っ張ると、 「なんだなんだ。トイレの位置間違えちゃったのかな」 と言いながらようやくご主人が立ち上がった。 ワシは居間から縁側へと向かうご主人と一緒に扉を出る。 するとご主人が、 「うわー、雪だ~。雪降ってるよ、朔太郎!」 と笑顔になりながらワシを抱き抱えた。 ― ご主人は昔から雪を見ると楽しそうだったからの - ガラス戸を開け庭に出て、白い息を吐きながらご主人は空を嬉しそうに見上げていた。 夜空に舞う雪を見ながら、新しい一年を迎えようとしている。 来年もまたこの家とご主人に世話になるかの… ご主人の腕の中はこたつと同じくらい暖かかった。
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