2人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「私が悪いの。ディーテが心優しく、カトレヤとお茶をしないって誘ってくれたけれど、私が思いっきり断ったから」
「女王様は、アネモネの気持ちを知って……」
「うん。色々と手を貸してくれたけれど、あの子、結局、自分のモノに手を出されるのは嫌な子だってことは分かったから。もういいよ。ありがとう。私よりディーテの傍に行ってあげて」
「でもこれは女王様の??」
「また、命令?あのさ、カトレヤは、自分で動いたりしないの?」
「それは……」
「あの子のお人形のままでいいの?」
アネモネにそう言われて、僕は自分の手のひらを見つめてみた。今までずっと彼女の命令に縛られて生きてきたから、”自分”がどうあるのかよく分からない。僕はこれまでも、これからも女王様の”アリス(人形)”であるのは間違いなく、僕には女王様しかいないということは分かっていた。
アネモネが僕のことを可哀想な目でみる。ベッドから立ち上がって、僕を抱きしめる。
「カトレヤはカトレヤなんだから、自分で動いていいの。貴方も素直に生きてみなきゃ」
「……アネモネ」
「ね、命令なんて、たまに無視してみればいいじゃない?」
「それは……」
そんなこと一度もしたことがなくて怖かった。
アネモネがぎゅっと僕の両手を握りしめて、祈るように目を閉じる。
「カトレヤ、大丈夫だから」
「……ありがとう」
「あのね、カトレヤ、ディーテの命令じゃなくて、私の”お願い”を聞いてもらってもいい?」
「ん?なんだい?」
「お願い、ちょっと屈んで」
「え」
「いいから、お願い」
「んー、わかったよ」
僕は身を屈み、アネモネと距離を縮める。
アネモネがちょっと背伸びをして、僕のおでこにそっと触れるだけのキスをした。
「えへへ。カトレヤ、頑張ってねのおまじない」
「うん、ありがとう」
照れたように微笑むアネモネに、僕の心は勇気づけられた。
そんな僕らの姿を見ていた陰がいるなんて思いもよらず、僕とアネモネはその後も、美味しい紅茶を淹れながら、女王様の話で盛り上がった。
最初のコメントを投稿しよう!