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その後のデートは要とファーストフード店に行ったり、カラオケに行ったりと何かと楽しく遊んでいた。
時々、前世の記憶を思い出しては、心ここにあらずで、要に心配させちゃったこともあるが、適当に誤魔化した。あまり納得していなかったが、要はそれ以上は追及することはなかった。
「じゃあね。俺様の為にありがとな」
「……うん。要が楽しそうでよかったよ」
「えへへ、最後まで静騎が一緒になって遊んでくれたおかげだよ」
ニシシと笑い、要は大きく手を振っていた。
角に差し掛かる所までずっと手を振っていた。静騎ー、と声を張り上げて僕の名前を呼ぶ。ちゃんとこっちを見届けてくれているか確認しているようだ。そんなまるでおつかいにでも行く子供のような要が可愛くて、くすくすと笑えてきてしまう。
家に帰ると、荊羅が眉間に皺を寄せ、頬を膨らませていた。いつも以上に機嫌が悪い。
頬に冷や汗が流れ落ちる。これはやばい、と頭が危険信号を出しているが、体が動かない。
「アリス」
「は、はい。何でしょうか?」
「なんで要とお出かけしてるの?」
「な、なんででしょう」
「要のところには行ってもいいけど、二人で出かけていいなんて言ってないでしょ!」
「す、すすすみません」
確かに、彼女は要の下には行ってもいいとは言ったが、彼女は命令など下していない。デートは要からのお願いだ。
荊羅の逆鱗に触れてしまったようで、これから起こる罵倒の連発に備えて、僕は心を無にすることにした。こうなった荊羅は誰にも止められない。全ての怒りを僕にぶつけるまでは、治まってはくれないのだ。
説教が長く続かないことを祈りながら目を瞑っていると、その時インターホンが鳴った。嬉しい来客に僕は心が弾んだ。良かった、これ以上聞かなくて済む。
「……ご、ごめん。出るよ」
「早くしてきなさい」
「は、はい」
僕は玄関で突っ立っている様子なので、そのまま体を反転させて、来客の対応をする。
誰かな、とドアを開けるとそこには僕を救ってくれる女神様がいた。
「飛鳥!」
「あら、早いご対応ね」
「い、いやー。で、どうしたの?」
「うちのばあちゃんが沢山煮物を作ったの。良かったらどう?」
「あ、ありがとう」
「って、白撞さんもいるのね」
「……どうも」
飛鳥と荊羅が対面する。彼女らの背後で虎と蛇がいがみ合っているのが後ろに見えるのは気のせいだろうか。
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