いつもの朝

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僕には前世の記憶がある。前世の僕は男であり、尚且つ女王に仕える配下であった。 僕と言っているが一応女の子である。前世が男だったためなのか女らしく振舞えないから、女子にモテる。また、背もそこらの女子よりも高くて、髪も短いため、男の子に間違われることも多い。そのため、告白されたことが数回ある。僕としては嬉しいのか、悲しいのかわからない。 僕以外にも前世の記憶を持つ娘がいる。その娘の名前は白撞荊羅(しらつきいばら)。幼馴染で、小さい頃からいつも一緒に居る。そんな彼女の前世は僕が仕えてきた女王である。 僕と彼女の出会いは運命というべきものだろう。いつになっても、僕は彼女に仕える者であり、彼女はずっと僕の女王様である。 「アリスー! はやくしなさいよ!」 僕は学校へ行く身支度を急いで済ませ、バタバタと階段を降りる。玄関に辿り着くまでに朝ごはんのパンを食べ、歯を磨き、寝癖も整える。そして、女王様が待つドアを開ける。 外では、彼女はいかにも怒っているように眉間に皺を寄せて仁王立ちしていた。 「ごめん、荊羅。待った?」 「待ったわよ。はやく私を後ろに乗せなさい」 「はいはい……」 荊羅はぴしりと僕の自転車を指さした。やはり前世の記憶からなのか女王様気取りで我が儘で傲慢である。 学校ではこんな彼女は滅多に見せない。学校では彼女は皮を被って、女王様ではなく、気品に満ちたお嬢様を演じている。 僕のことを”アリス”と呼ぶのも僕と二人っきりになったときだけ。”アリス(人形)”とは、前世から言われている僕のあだ名みたいなもので、荊羅が命令を下すときによく呼ばれる。 自転車を彼女の傍まで持ってきて、先にまたがる。後ろに彼女がまたがったのを確認すると、僕は自転車をこぐ。もちろん安全運転で学校まで自転車を休まず走らせる。 急な坂に差し掛かった。足がもつれる。後ろに一人人を乗せているため、正直言ってつらい。全く上に上っている感じがしないが、それでも足を止めることなく僕は頑張って坂を上って行く。彼女は絶対にそこから下りようとしない。 「アリスしっかりしなさいよ。学校、間に合わなくなるわ」 「そう、思うなら、降りて、下さい、」 「嫌」 彼女は即答で返してきた。 僕は、何とか持ちこたえて、坂を最後まで下りることなく、上ることができた。 これはいつもと同じ朝の出来事。
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