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翌朝、学校へ荊羅と行こうと思い荊羅の家に寄ったら、彼女の母親がもう登校したとのこと。
要とのことをまだ怒っているんだなと思いながら一人、静かに登校した。
教室に行くとやはり先に荊羅が来ていた。荊羅に声を掛けようとしても、避けられてしまい、あっという間に朝のSHRが始まる時刻だった。
避けられているという行為は前世の夢を思い出す。なんだかデジャヴを感じて、それと同時に嫌な予感がして、胸がざわざわと落ち着かない。
「えー、今日は転校生を紹介します」
朝から元気のある声で、皆の前に立つ小枝ちゃん。
黒板に転校生の名前を書き、廊下にいる転校生呼ぶ。
赤髪のショートの髪型に、髪型と同じ色の瞳、キリッとした中性的な容姿がとても似合っていた。男とも女とも言える姿見に、周りの生徒たちは騒がずにはいらない。
「きゃー。ちょっとかっこよくない?」
「そうよね。女としては勿体無いわ」
ざわつき出す教室に、僕の心も今まで以上に煩くなった。
彼女の姿が、どう見ても前世で出会ったあの方に似ているから。まさかこの人も覚えているんじゃないのかと期待してしまう。
「紹介するね!彼女は利渕深咲さん。今日から仲良くね!」
「利渕深咲です。宜しく」
小学生のような転校生の紹介に対して、大人で落ち着いた雰囲気の利渕さんの応対に誰もが息を漏らす。
クラスの女子たちが黄色い声を上げている中で、荊羅の様子を伺った。彼女も利渕さんの容姿に驚いているようだった。
それもそのはずだ。だって彼女はあのアドニス様にとても似ていたから。前世の彼がちらつく。あの人も赤髪だったし、何よりふっと静かに微笑む姿は瓜二つだった。
「じゃあ、利渕さんは、窓際の一番前ね」
「はい」
利渕さんは、小枝ちゃんに言われた通りに窓際の一番前の席に立つ。彼女が座る時に自然と目が合う。僕は咄嗟にそっぽを向いたが、五月蝿い教室の中でも彼女が笑う声が聞こえた。
「ふふっ」
「なんかいけ好かない子ね」
飛鳥だけが、彼女のかっこよさに靡かず、普通に今日も本を片手に読む姿に、彼女の素直さに少しだけ心が救われた。
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