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教室に戻ってくると、利渕さんの周りには他の生徒たちが集っていた。僕との関係やどこから来たのかとか質問攻めになっていた。
そこへ小枝ちゃんが再び現れ、パチンと気合い入れのように手を叩くと、教室はしんとなって、群がる生徒たちは自分たちの席へと戻り、授業が始まった。
授業中にも関わらず、僕の頭の中は前世のことばかり。2人の関係がどうしても頭の中から離れなくって、溜め息ばかり吐く。
「……いたっ」
頭に何かが当たった。
トサッ、と目の前に落ちた物を拾い上げる。くしゃくしゃの小さな紙。開けて見ると中には綺麗な達筆で書かれた見慣れた文字。
『さっきから溜め息ばっかついて鬱陶しい』
毒が入ったその文字に思わず笑みが零れる。
端の方にある空白の部分に返事を書いて、紙をぶつけた者に返す。
『ごめん。飛鳥』
彼女のその性格に僕は何度も救われた。
授業に集中するため、僕は前を向いてノートを写す。少しだけ僕の心は晴れた気がした。
***
お昼休みの時、弁当を荊羅と一緒に食べようとしたが、利渕さんに先越されてしまった。その彼女の行為に周りの女子はきゃっきゃと騒いでいる。彼女と荊羅は二人とも容姿が綺麗で、お似合いのように見えるのだろう。
しかし、利渕さんとは関わりたくないはずなのに、荊羅は、そのまま素直に利渕さんと一緒にいる。嘘の笑顔を利渕さんに浮かべているのはわかっているが、どう見ても利渕さんと荊羅が二人とも仲よさげに見えるのだ。チクンと痛んだ胸を握り締めながら、僕は彼女達から目をそむけた。
「どうしたの?ご飯は?白撞さんと食べないの?」
飛鳥が問いかけてきた。机の上には可愛らしい弁当が置いてあった。
「……あー、取られちゃって」
へらりと笑ってみせると、箸で額を突かれた。飛鳥が席を立つ。そして頭に温かい人の体温が感じられた。其方に目を向けると、飛鳥の手が僕の頭に置かれていた。
「あほ」
ぽんぽんと数回優しく叩かれた。その彼女の優しさに目が霞む。涙が出てくるのを運良く堪え、彼女の優しさに縋った。
「飛鳥、一緒に弁当食べよ」
「今回だけだよ」
いつもは駄目と断る飛鳥であるが、僕の心境に気づき、優しく接してくれる。嬉しくて笑うと、飛鳥の弁当の蓋が飛んできた。
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