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放課後、荊羅と利渕さんは二人で仲良く教室を出て行った。何も聞かされていない僕は、とにかく二人の後を追った。いつも荊羅と一緒に登下校できたのに、利渕さんという得体の知れない人が現れて、僕らの日常が変わってしまう。
僕は、音を立てずに静かに彼女らの後ろをついて歩いた。二人は喋ることもなく、一緒に昇降口までやってくる。
そこへなぜか要がいきなり僕の目の前にひょいっと飛び出してきた。要が現れたことによって、二人がどこへ行くか着いて行くことができなくなった。
「要……なんで……」
「あはは、デートぶりだね。あのさ、ちょっと話できないかな?」
「え、今はそれどころじゃなくて……あっ」
「ん?何かしてたのか?」
「え、あ、いや、えっと」
要は、僕が二人の尾行をしていたのを知ってか知らずか二人の姿が消えた方を向く。
「誰か追いかけてたのか?それは悪いことしたな」
シュンとなる要。悪気があって僕の行動を塞いだ訳ではないのはわかっている。
それでも今は、要の相手をしている場合ではない。僕は急いで、荊羅の後を追いかけなければならない。荊羅が、僕以外の人と一緒に、出かけていくのは嫌だ。しかも相手は、前世を持つ人なら尚更だ。
「ごめん。要、僕行かないといけない」
「そっか。わかった」
要に別れを告げ、僕は急いで校舎の外へと出た。しかし、二人の姿はどこにもおらず、どっちに行ったのかも分からない。きょろきょろと辺りを見渡してみても、彼女らの後ろ姿さえ確認できなかった。
「くそっ、どこ行ったんだよ」
とりあえず荊羅の家へと行ってみる。もしかしたら、利渕さんに送られてくるかもしれない。だけど、荊羅の家で待っていても、ちっとも帰ってこない。荊羅のお母さんも不思議そうに時計を見比べる。
「変ね。もう帰って来てもいい頃なのに。しかも静騎ちゃんと別々だなんて。今までそんなことなかったのに」
「……っ、僕、その辺見てきます」
僕は居ても立っても居られず、荊羅の家を出て辺りを探した。すると、夕陽を背にして、荊羅と利渕さんが歩いて来るのが見えた。仲よさそうに歩いているかと思いきや、どこか神妙な顔つきで歩いて来るから、家に帰ってくるまでに二人の間に何かあったのかもしれない。
僕は二人に駆け寄り、利渕さんに突っかかった。
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