薔薇に隠れた真実

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翌日、利渕さんと荊羅となぜか飛鳥も交えて、学校からすぐ近くの市立図書館へとお邪魔した。まだ利渕さんには、昨日の彼女の発言やら、彼女の荊羅に対する接し方に、警戒心を抱いていて、一歩でも荊羅に近づこうとするものなら、僕は噛みついてやろうと思った。 そんな僕のむき出しの警戒心に鼻で笑われ、まるで自分の方が有利だ、なんて余裕そうな顔をするものだから、余計に馬鹿にされた感じがして、腹が立たないわけがない。 「それでも、私を使って距離を取るなんて、静騎のほうが負けている感じがするわ」 「そんなこといったって、荊羅が飛鳥の向こうに行けって」 「あなたがそうも攻撃的だからでしょう。もっと穏便にできないの」 「だって、あの人すごい、ムカつくことするから」 「はあ、子どもね」 「なっ!飛鳥までそういうこと言うー」 「そうやって感情的になるから、子どもねっていうのよ」 そう言って飛鳥は、これから僕らと会う予定をしている司書さんが現れるまで、図書館にある今読んでいる本の続きを読んでいた。 僕らは横一列に並んで、会議室の一室で、利渕さんが「荊羅に似た人を見つけた」ということで、その荊羅に似た司書さんを待っていた。 「飛鳥は何読んでるの?」 「”Rose hell a queen”」 「え?」 「ある薔薇園に眠る女王様とその女王様を守る配下のお話しよ」 「それって……」 「外国人が書いた話なのに、翻訳とかなくてね。この作者、日本語がすごく上手なのね」 「まあ、ありがとう。嬉しいわ」 飛鳥が読んでいる作者を褒めていたのだが、部屋に突如現れた、黒髪の長い髪を左右の肩から流し、荊羅と同じように前髪が切り揃えられた女性が嬉しそうに頬を紅潮させる。丸眼鏡が重たそうにずり落ちてしまうのを、くいっと上に上げてから、私たちの前に座った。 「お待たせしてごめんなさいね。ちょっと検索に手間取っちゃって。私は、ここで司書をしている荊木穂子(いばらぎすいこ)っていうの。よろしくね。実を言うと、それ私が書いたのよ」 「え、でも、名前が……」 「ああ。ペンネームにちょっとね。でも外人の血が混じっているのは嘘じゃないわ。ひいひいひいばあちゃんが確かそうだったから。自分の苗字がバラだからそれにちなんでつけたわ」 飛鳥が持っている本を盗み見る。 その本の作者の名前が、ロサ・ルゴサといい、それはバラの品種の名前らしい。
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