薔薇に隠れた真実

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茨木穂子さんが眼鏡を外した。益々、荊羅とよく似ている。荊羅の方を見てみると、自分と瓜二つの容姿が目の前にいて、戸惑っているようだ。 「貴女が、白撞荊羅ちゃん?」 「どうして、名前を……」 「貴女のお母様と面識あるのよ。同じように名前に荊があるから、何かと親近感が湧いたようでね」 「そうなんですか……」 荊羅は、なんだか自分が知らない所で自分を他人に知られていて、身体がむずかゆいようで、身をよじる。荊木穂子さんは、そんな荊羅を姉妹のように、懐かしむように目を細める。 そして、飛鳥の方を向き、自分が書いた本を受け取り、私たちの中心に置いた。まるで、この出会いは、この本の中に全て答えが載っているとでも言うように物語っていた。しかし、前世など知らないはずの飛鳥が同席しているのはとても気になったが、気にしないでと飛鳥がひらりと片手を振ったところで、荊木穂子さんの話が始まる。 「皆さんは、薔薇園の前世を持っているようですね。私は、そんな薔薇園の女王様、ディーテ・フローラルの子孫よ」 その時、僕たちの中で封じられていた薔薇の鎖が弾けた。走馬灯のように今まで忘れていた記憶が流れて行く。でも、僕が覚えているのは、18歳までのカトレヤの記憶だけだった。 その後のディーテ様がどうなったかはわからない。アドニス様との婚約を経て、カトレヤは薔薇園の屋敷に執事として取り残され、ディーテ様とは離れ離れになってしまったからだ。 「子孫なんて記憶私にはないわ」 「そうね。皆さんは18歳までの記憶しかないの。なぜなら、18歳のディーテ様の誕生日に、あることが起こったわ」 「それって……」 利渕さんが席を立ち上がった。彼女は、心当たりがあるようだ。 穂子さんが目を閉じた。何かを決意したように、机の上に置かれた両手を握りしめる。そして、それは、穂子さんからではなく、飛鳥の口から放たれた。 「ローゼンクロイツ」 「ローゼンクロイツ?」 飛鳥は頷いた。 飛鳥の言葉を引き継ぐように、穂子さんが続いた。
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