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息を少々切らしながらも、学校には着いた。
毎回のことだから筋肉痛とまではならないが、身体に少し負荷がかかる。
僕も一応、女だ。体力にはあまり自信がない。
僕達が通う学校は私立朱桜学園。小中高とエスカレーター式の学校だ。女子の割合が多く、男子はほんのわずかしかいない。
学校に入った時点で、荊羅の女王様がもう見れなくなる。あの気取った態度の女王様が一変として、おとなしくて可愛らしいお嬢様が顔を見せる。おしとやかにクラスメイトたちに「おはよう」とあいさつをする。
荊羅は、誰でも魅入るほど綺麗な容姿だから目立つ。綺麗な長い黒髪に、切りそろえられた前髪、つんと立つ高い鼻に、きりっとした凛々しい目元をしている彼女は、そこらへんの女子より綺麗で大人っぽい。
そんな彼女に憧れを持つ女子も少なくない。僕もその中の一人であり、いつも彼女を目で追ってしまう。
「荊羅ー!」
ポニーテールが似合う元気な彼女、羽柴咲良は、荊羅のもとまで飛んできては、毎日のように荊羅の体に抱きつく。自称荊羅の大親友だとのこと。
「咲良、おはようございます。今日も元気ですわね」
にっこりと咲良に微笑む荊羅。正直言って羨ましい。
僕もあんなふうに笑顔を向けてもらいたい。いつも怒ったような顔しか見たことないから。だけど僕には咲良が知らない秘密を荊羅と共有しているのだから我慢をしよう。そうだ我慢だ、と目を閉じて自分に言い聞かせる。
「荊羅、可愛すぎ! 毎回毎回、静騎と来てることが不満だ!」
「そう言わないでください。私はこうして咲良と一緒にいられて嬉しいですわ」
「もー可愛いよー! このまま攫いたい気分だ!」
毎朝起こるこの二人の会話は、耳が痛いほど同じような言葉を聞いた。
僕が目を瞑って、感情を抑えているのを知ってかしらずか、咲良は一向に荊羅の傍から退くことをしない。二人の仲を割って中に入りたいが、”学校では大人しく”という女王様のご命令が出ているからそんなことはできない。
彼女達にばれないよう密かに僕は溜め息をつき、彼女の後を追って、教室に向かった。
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