2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ローゼンクロイツは、ディーテ・フローラルに呪いをかけたの」
「呪いってなんなのよ」
「それは、ディーテの美しさに惚れたローゼンクロイツは、18歳になったディーテを自分のものにしようと永遠の眠りの呪いをかけたの」
「でもそんな記憶私にはないわ」
「そうね。それは、貴女が呪いをかけられる前のディーテであって、かけられた彼女は別人のように変わってしまったの」
「そんなっ」
荊羅は、口を押えて驚きを隠せないでいた。
「女王様が、そんなことになっていたなんて、僕全然知らなかった」
女王様の配下でありながら、彼女の人形でありながら、常に傍に居ないことを悔いる。僕は彼女の傍に居られなくなった後は何をしていたのだろう。
「当たり前です。カトレヤ・エデュッセルは、薔薇園に残された後、そのまま軍隊として戦争へと駆り出され、戦死したという記録になっています」
穂子さんは、本を読むように僕の前世の経歴を話した。そして、続けてアドニス様のことも告げようとしたら、利渕さんが手で制した。
「それは自分が一番知っている。私は、ローゼンクロイツと戦った。でも、ディーテを守ることも出来ず、ローゼンクロイツに殺されたんだ」
「ええ?!」
僕の叫び声が館内に響き渡る。
穂子さん、荊羅、利渕さん、飛鳥――全員に”静かに”と注意される。
「……ごめんなさい」
「……あと、久島飛鳥さん」
「なんで、飛鳥の名前を知って……」
穂子さんは飛鳥の名前を呼ぶと、本人の目の前に貸し出しカードを差し出す。
最初のコメントを投稿しよう!