薔薇に隠れた真実

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飛鳥の体がびくりと大げさなくらいに反応した。皆が飛鳥の方を向く。 「貴女にも、あるんですよね?」 「……何が?」 「その本を借りて読んで下さっているっていうことは、貴女にも前世があるんですよね?」 「……私はただ、面白そうだから借りただけで」 「嘘です。その証拠に、貴女の左手首に薔薇の紋章があるはずです」 思わず飛鳥は左手首を握る。それが決定的なことだと理解し、穂子さんに引っ掛けられたことに気づく。飛鳥は、穂子さんを睨むと、はあっと大きく息を吐いた。 「そうよ。私もあるわ」 「貴女の前世は……」 「いい、自分で言うから。静騎、ちゃんと聞きなさいよ」 「へ?僕?」 さっきから流れるように自分の知らない前世の出来事が知らされて、頭がいっぱいいっぱいなのに、更に飛鳥から驚くことを聞かされるのだろうか。僕は、耳を澄ませて、飛鳥から告白される前世の記憶を聞こうとした。 「私は、カトレヤ・エデュッセルの姉、レリア・エデュッセルよ」 「え?姉?」 「そうよ。まあ、あんたは覚えていないだろうけど」 「うん、覚えていないかも」 「そりゃあそうよ。あんたとは、まだ4歳の時に別れたんだから」 薔薇園で執事をしているときの記憶から遡ろうとしても、ディーテ様の執事として初めて出会った頃の記憶はあっても、それ以上前の記憶はどう足掻いても出てこない。僕に姉なんていたっけ?と首を傾げてみると、荊羅が思い出したかのように「あ」と小さく声を上げた。 「いたわ、いた。カトレヤと一緒に一度薔薇園に訪れてきたけど、それ以来会ったことはない気がする」 「そうね。それには事情があるの」 「事情って何よ」 「それは、私はアドニス・モンテブランの父親に引き取られ、弟のカトレヤはディーテ・フローラルの母親が引き取ることになったからよ」 「え?」 複雑な事情に言葉が出ない。 飛鳥が一息吐いた後に、会議室にもう一人司書さんが現れる。僕たちの目の前に温かいお茶が並べられた。 「長話になりそうだったから。喉が乾くでしょ?」 穂子さんが一番に湯呑みに手を出し、ふーふーと冷ましてからお茶を飲んだ。
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