いつもの朝

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SHRが始まるチャイムが鳴る。先生が教室に入ってきた。 担任の先生である、小枝ちゃんが教卓に立った。本名は相堂小枝子(あいどうさえこ)。小柄で可愛い容姿の彼女は、この学園でとても人気がある先生である。 「来週からテストがあるよー! ちゃんと勉強してね!」 「ええー!」 高いソプラノの甘い声に、きゅるんと可愛らしくウインクをきめる。もう三十五歳だと聞いて誰もが驚くほどの年齢と合わない可愛らしい容姿に皆は騙されてしまう。そんな小枝ちゃんだが、たまに生徒にお菓子を作って来てくれたり、親身になって相談に乗ってくれたりと優しくて頼りがいのある先生である。 「煩いわね」 クラスから巻き起こるブーイングに、本を読みながら呟く隣の席に座る飛鳥。僕は苦笑するしかなかった。 右二つ斜め前の席を見てみると、そこにも嫌そうな顔をする荊羅。彼女は容姿端麗な割に、成績は中の下なので、テストという存在が嫌いなのだ。 「なんで私がそんなものを……」 彼女の口からボソっと呟いた愚痴は僕にしか聞こえなかっただろう。がじがじと爪を噛んで、イライラした気持ちを抑えている。もし、彼女がこのイライラを教室で爆発させたら、どうなるだろうと想像してみた。机に立って、テストを無理矢理終了させる荊羅が出てきた。学校では絶対に見たことない姿に、それは起きないだろうと首を振った。 それにしても去年のテスト勉強は災難だった。 荊羅と勉強をやるのはいいものの、『問題用紙を持って来い』『お前のをカンニングさせろ』など無茶苦茶なことばかり言う。そのため勉強らしい勉強があまり出来なかった。そのせいでかしらないが、僕の成績も落ちてしまった。 今年のテスト勉強はどうか平和でありますように。僕はSHRの終わりのチャイムが鳴ったのと同時に祈った。
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