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昼休み。
僕はいつも屋上で荊羅と弁当を食べている。
弁当はどちらとも僕のお手製である。なんでも荊羅が『私に弁当を作りなさい』とのこと。料理はさほど得意でもないが、荊羅のために朝早く起きて試行錯誤して弁当を作った。しかし、その後に二度寝をしてしまって、いつも遅刻ギリギリになってしまう。
「んー、この玉子焼きは何時食べても美味いわ! アリスの分も私の物よ!」
素早く箸を使い、僕の玉子焼きは荊羅の口の中へ消えていった。
荊羅の弁当には多く玉子焼きを入れたのに、もうなくなっていた。それほど僕が作った玉子焼きが好きと分かる。それはとても嬉しいが、弁当に残っている他のおかずたちが食べてくれずにしょぼくれているのが見える。
「玉子焼き意外も食べないと栄養がないよ」
「いちいち煩いわね。……あ、これ私嫌いって言ったわよね!何で入ってるのよー」
「好き嫌いしたら駄目だって」
「アリスが食べなさい!」
そういってピーマンを僕の弁当に移す彼女。
僕は渋々、ピーマンを口に入れた。正直言って僕もあまり好きではない。口の中にピーマンの苦味が広がってくるのが分かる。荊羅に食べてもらうために、わざわざ荊羅の方の弁当に苦手なものを入れたのに、こっちに返ってくるなんて誤算だ。
荊羅の弁当に入れたピーマンのお浸しがこっちにたくさん戻って来た。せっかくあとはおにぎりを一個食べるだけだったのにすごく腑に落ちない。
スピーカーにマイクが入るジジッという音がした。何かこれから嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
「静騎ー! 俺様の所においでー!」
一般女性より少々低い声、俺様口調で喋る彼女は、毎度のことながら昼休みに僕を指名する。
朱桜要。この学園長の孫にあたり、学園の生徒会長でもある。彼女は、一度僕と体育祭でレースを一緒に走ったときに、僕に負けて以来、なにかと突っかかってくる。
「静騎、呼ばれてるわよ」
「行くものか!あんな奴の下になんか――」
「女王様命令」
「う、……はい」
僕は昼休みが終わるまで荊羅と居たかったのに、女王様は静かに命令を下して、残りの弁当を平らげた。
「私、面倒事は嫌いなの知っているわよね。行きなさい」
「はいっ」
後であいつに何か仕返しをしてやろうと考えながら目的の場所に向かう。
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