RUSUBAN

2/6
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「おとうさん、まだかなあ。」 コタツから出て、おそるおそる玄関の戸を開ける。 夕方小学校から帰る時間には、まだ土のデコボコの上に、まだらにかぶるくらいだった雪。あっという間にこんもりとお隣の屋根を、塀を、植木を、地面を、真っ白に覆っていた。 「うわー。すごいなあ。」 地面には、玄関に向かう途中で引き返した足跡がある。 おとうさん慌てん坊だから、家に着く前にどっかにサイフ置いてきちゃったのかも。いつもお金ないないって。お金がないのはすぐサイフ失くすからって言ってる。 「おーちゃん、雪、いっぱいつもってるよ。」 クリスマスには降ってくれなかった雪。 サンタさんは雪がないとソリに乗れなくて大変なんだって。 だから私のとこまで順番が回ってこなかった。 その雪が、一面に。 今日がクリスマスならよかったのになあ。 オウスケは一目散に外に駆け出した。 「おーちゃん、待って!」 大人の足跡を追いかけるように走るオウスケの小さい足跡を、私もまた追いかける。 「おーちゃん?」 街灯にやんわり照らされたいつもの公園で、オウスケははしゃいでいる。 誰にも踏まれていない公園の雪は、ふかふかの白いお布団みたいだ。 オウスケは雪の布団に寝転がった。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!