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「おとうさん、まだかなあ。」
コタツから出て、おそるおそる玄関の戸を開ける。
夕方小学校から帰る時間には、まだ土のデコボコの上に、まだらにかぶるくらいだった雪。あっという間にこんもりとお隣の屋根を、塀を、植木を、地面を、真っ白に覆っていた。
「うわー。すごいなあ。」
地面には、玄関に向かう途中で引き返した足跡がある。
おとうさん慌てん坊だから、家に着く前にどっかにサイフ置いてきちゃったのかも。いつもお金ないないって。お金がないのはすぐサイフ失くすからって言ってる。
「おーちゃん、雪、いっぱいつもってるよ。」
クリスマスには降ってくれなかった雪。
サンタさんは雪がないとソリに乗れなくて大変なんだって。
だから私のとこまで順番が回ってこなかった。
その雪が、一面に。
今日がクリスマスならよかったのになあ。
オウスケは一目散に外に駆け出した。
「おーちゃん、待って!」
大人の足跡を追いかけるように走るオウスケの小さい足跡を、私もまた追いかける。
「おーちゃん?」
街灯にやんわり照らされたいつもの公園で、オウスケははしゃいでいる。
誰にも踏まれていない公園の雪は、ふかふかの白いお布団みたいだ。
オウスケは雪の布団に寝転がった。
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