RUSUBAN

4/6
前へ
/6ページ
次へ
家の中も外と同じくらい寒いから、一番上等のジャンパーをいつも羽織っている。だけどジャンパーは一昨年から着てるからもうとっくに窮屈。 「アツアツのグラタン食べたくない?」 「たべたーい。」 隣のミホちゃんちのお母さんはよく作ってくれるって。私も食べてみたい。いつもうちにはおとうさんが朝早く、私の知らないうちに作ったきりの冷めたごはんとオカズしかない。 「それからそれから?」 「レンガのお家には煙突があって、暖炉がある。見たことある?」 「だんろってなあに?」 「薪をくべて火をたくんだ。本当に暖かいよ。」 「あ、わかった。メガネかけたおばあさんがイスにゆられて編みものしてる?」 「そうだね。おばあさんはいないけど椅子も毛糸もある。」 「パンにチーズのせてやける?チーズがとろーりこぼれるくらい。」 「パンもチーズもあるよ。やってみるかい?」 絵本みたいだ。サンタクロースの家なんてすごく行ってみたい。うそっぽいけどおとうさん帰ってくるの、遅いし。退屈だし。 「手ぶくろは?」 「あるよ。」 「マフラーは?」 「あるよ。」 「ブーツ。」 「あるよ。」 「内がわにモフモフした毛が生えてるブーツだよ?」 「あるね。」 決めた。オウスケと一緒にあったかいお家についていこう。だっておとうさんも、私たちがいない方がきっとお金に困らない。 「おじさんちに行ったらいっしょにあそんでくれる?」     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加