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RUSUBAN
「おーちゃん、さむいね。」
オウスケは返事しない。
「おとうさん、おそいね。」
オウスケは返事しない。
「トランプしよっか。」
いつもしゃべるのは私だけなんだ。部屋の中で吐く息が白い。
「あーあ。よっこらしょ。」
仕方なく小さなコタツの布団から這い出して、重たい台をひっくり返すと、ほら、緑色のフェルトが貼ってある。
ツルツルの表にトランプを置くと、指で掴みにくい。オウスケと二人で爪でカリカリやってると、お前は不器用なんだからトランプやるなら裏側使え、とおとうさんが教えてくれた。
「七並べ、やるよ?」
四つの7を縦に置く。
数字をマークごとに一列に並べていく遊び、これならオウスケだって分かりやすいと思う。
…7の左と右に順番に並べるだけなのにな。
何を出せばいいか理解してないオウスケの代わりに、手札を選んで出してやる。
やっとハートの数字が一列に揃った。
ハートが一番先に揃うようにズルしたけどね。
なのにオウスケは突然、台の上のカードをぐちゃぐちゃにした。
「もう!オウスケ!」
オウスケはプイッと寝転んだ。
その時、ドサドサッと大きな音がした。
屋根雪がまとまって落ちたのだと思ったけれど、ちょっと怖かった。
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