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ログハウス
ログハウスの中はガランとしていて、必要最小限のものしか置かれていなかった。
家電と言えるようなものは電気しかない。
――つまり暖房設備もないのだということに気がついて、僕は震え上がった。
「あの、寒くないですか?」
女性は涼しい顔をして首を傾いでいる。慣れなのだろうか? 見てるこちらが寒くなる格好だというのに。
すると女性は「ごめんなさい」と謝った。
「あなたをもてなしてあげたり、暖めてあげることはできないの」
突然訪ねてきたのはこちらのほうなのだからもてなしなんて厚かましい期待はしてない。むしろ家にあげてもらえただけでもありがたかった。
そう思って僕はかぶりを振ったけど、それでもなお女性が申し訳なさそうな顔をしているので敢えて話題を変えることにした。
「君はいくつ? ここは長いの?」
同じくらいの年だろうからとフランクな言葉遣いで尋ねたが、女性は年を答える気はないらしく、「そうね、長いわ」とだけ答えた。
「あなたこそ、どうしてこんな雪深いところまで来てしまったの? ここはスキー場からだいぶ離れた場所にある。なかなか人の来ない場所よ」
「……夢中だったんだ」
そう言って僕は彼女の顔を脳裏に思い浮かべた。
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