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彼女
彼女とは大学に入って知り合った。同じゼミの仲間だ。
最初はときどき言葉を交わす程度だったけれど、飲み会で同じ釣りが趣味と聞いて意気投合した。
それからはよく一緒に海や川で釣りをした。
初めてのキスも海釣りをしていたときだった。
船が揺れて上手くできなくて笑いあったっけ――。
「彼女はアウトドアが好きなんだ。彼女は俺よりよっぽど山をわかってる。そんな彼女が山から帰ってこないんだ」
「ねぇ、海人。遅くなったら迎えに来て?」
「だって暗いと怖いじゃない? お願いよ。必ず迎えに来てね」
彼女はどんな思いでただ一人、この山にいるのだろうか?
「……もうダメかもしれないってわかってるけど……連れて帰ってやりたいんだ」
堪えきれず、僕の目からはボロボロと涙がこぼれた。
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