一、消えた存在

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「私はこの新聞が最終更新だと思ってるの。 広太くんの持ってきた新聞で最終更新なら、納得できるでしょう?」 「......なるほど」 こちらの意見は、「継続が困難になった」ではなく「継続の意思が無かった」か。 どちらの意見にも納得できない事はない。 しかし、だからといって全てを肯定するとお互いに矛盾が生じる。 出た意見をまとめるのは俺の役目だ。 先輩のリングノートを拝借して、自分の考えを述べる。 「では、俺の意見。 俺が広太派か先輩派を選ぶとしたら、広太派です」 「えぇっ?!」 先輩は驚愕の声を上げ、真向かいに座る俺に上体を寄せて訊く。 「ど、どうしてそうなるの!」 「先輩、新聞はちゃんと読みました?」 束の一番上に置かれた最終更新の新聞の表紙を見せながら、暴れ馬を(なだ)めるように慎重に理由を話す。 「ここには『第315号』と表記されています。 普通、最終更新なら『最終号』と表記しませんか?」 「む、確かにそうかもしれないわね......」 歯痒そうに唇を噛んで、椅子に腰掛け直す。 先輩が今の意見を出した理由は分かる。 何故なら昨日、最終更新の新聞は広太が持ち帰ってしまったからだ。     
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