一、消えた存在

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広太なら『第315号』の文字を確認した上で推論立てできるが、先輩はできない。 そうとなればこの新聞が最終更新だと思っても仕方がない。 「では次に。 広太の意見だ」 「まさかセンに賛同してもらえるとはね」 「いや、お前の意見に肯定的ではないぞ」 「......え」 広太の表情が、したり顔のまま固まる。 あくまで先輩と広太の意見を比べただけの話だ。 「広太、この新聞は一人で書かれたものだと思うか?」 「一人で、とは思わないね。 さすがにこれだけの情報を一人で書くには骨が折れるさ」 「そう。 こいつは複数人で書かれたのだと考えるのが妥当だろう。 そうなると矛盾が生ずるんだ」 「矛盾?」 自分の述べた意見をすっかり忘れてしまったのか、広太はぽかんとしている。 「仮に病気や怪我をしたのなら、代筆者がいるだろう。 一人の穴も数人なら埋められる。 更新を止める理由にはならないんだ」 「集団で事故に巻き込まれた、若しくは食中毒になったとか」 「......本当にそう思うか?」 「いや、あんまり」 困ったように眉を下げて肩をすくめる。
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