一、消えた存在

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「ん、どうして部の方を停止させたの? 新聞を止めた方が楽じゃない?」 先輩よ。 それは甘い考えだ。 「普通の教職員でも、この新聞を止められたとは思いません」 「どうして?」 首を傾げる先輩の前で、改めて『第315号』を指で叩く。 「仮に月報だとしましょう。 すると四捨五入で三十年の歴史を持っています。 そしてこの広学高校は創立三十年です。 こんなにも関係の濃い校内新聞を止めさせるのは、容易な事ではないでしょう」 「一般職員じゃなくても、校長先生ならどうかな」 「それもまた新聞を読んでみてください」 表紙の次ページを開いて先輩に見せる。 そのページには生徒会長の言葉と校長の言葉が載っている。 俺が読んでほしいのは全ての文ではなく、最後に記載されている文だ。 『この高校は初めてでありますから、生徒の皆さんと親しい交流が取れるよう精進致します。 以上、新米校長からの言葉でした。』 「あ、そういう事ね」 「新米なら校長就任から一年の可能性が高い。 つまり、新聞を停止させるほどの権力は持ち合わせてないでしょう」 「教頭から校長になった可能性は?」 きっと新聞を読み込んだのであろう広太から、その考えが出るとは思ってもみなかった。     
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