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理論武装が無い俺たちは丸腰同然なのだが。
「じゃあノックするぞ」
「どうぞ」
ふっと息を吐き、意を決して扉をノックする。 軽くノックしただけなのにゴンゴンと重たい音が響いた。
「............」
返事が、無い。
一応、扉に耳を当てて中の様子を伺うが何か作業をしていて気付かなかったというのは無さそうだ。
流れた沈黙に言葉を挟んだのは広太だ。
「もしかして留守......?」
悪事を働いているわけでも無いのに、耳を扉に当てたまま小声で返す。 これじゃあまるで、邸宅に侵入する強盗だ。
「いや、誰もいない事はなさそうだ」
微かにだが物音が聞こえるのだ。
但し、何をしているかまでは把握できない。
「会議してるわけじゃないよね」
広太は足音を立てないように慎重に近付いて、俺と同じように耳を扉に当てる。
「話声は聞こえないぞ」
今、他の生徒がこの光景を見たらなんと例えるだろう。 「お前らは耳が離れなくなったのか」と指をさされるかもしれない。
そう言われないためにも一旦扉から離れ、もう一度ノックを試みようとする。
「生徒会居留守の謎にならない事を願うよ」
そんな冗談を飛ばしながら広太も扉から一歩離れる。 気の抜けた心に喝を入れ直して、
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