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何を言おう初めに口を開いたのは生徒会の生徒だった。
「扉を開けたかと思えば、随分な御挨拶だな」
口を全く動かさずに皮肉をぼそりと呟いた。
目元までかかった漆黒にも近い髪が、より一層いまの言葉に嫌な深みを増す役割となっている。
「あの、ええと。 すみません」
恐る恐る右手を戻して、女生徒の反応を伺う。
「まあ、私にも悪い点はあった。 直ぐに出れば良かったんだよな」
なんだろう。 俺の不祥事を少しでも軽くしてくれているつもりなのだろうが、全くそう思えない。 寧ろこの発言ですら皮肉に聞こえてしまう。
「どうぞ。 入りたまえ」
「は、はい」
少し赤くなった額を隠すようにして、女生徒は俺たちを生徒会室に案内する。
室内に入るとき、そっと横から広太が小声で話しかてくる。 加えて、その声にはどこか震えが混じっているように聞こえた。
「セン、この方は元生徒会長だよ......」
何も返事が出来なかった。
いらん助言をするんじゃない。 知らぬが仏という言葉もあるだろうに。
これでスイケンの評価が下がったら、どう責任を取るべきだろうか。
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