一、消えた存在

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たしかあれは、中学生は一年の夏だったと思う。 三年前の記憶は鮮明に覚えているものじゃない。 『好きな事に熱中するのは良い事だ』と誰かが言っていた。 または何かしらの文献でそう記述されていた。 この言葉に感銘を受けた当時は手当たり次第に好きになれるモノを探していた。 絵を描いたり小説を読んだり、とにかく手当たり次第に探し求めていた時期が懐かしい。 結果として好きになれるモノの(ふるい)にかけられて残ったのは小説を読むことであった。 ちょうど夏休みに入る時期でもあったので図書室は開放されており、それが本を読み漁るきっかけとなったのだ。 手っ取り早くていつでも訪れる事ができるのが、篩に残った主な理由だろう。 小説で特にハマったのが人間の裏心理を巧みな伏線と共に引き出してくれる「推理小説」だった。
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