二、それぞれの捜査

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生徒会には長机が教卓から見て横に伸びるように置かれていた。 そして長机の周りには、座面がクッション材の丸いスツールが置かれている。 元会長に手で指示を受けて、俺たちは向かい合う形で座っている。 長机の上には広太が持ち寄った校内新聞が無造作に並べられている。 彼女の額の赤みは幸いにも薄くなって、やっと俺の中で曇っていた心と表情には余裕が生まれる。 まさかノックしたのが生徒会員でありあまつさえ元会長とは運が無かった。 恐らくあの事故が無ければもっと円滑に会話が始められただろう。 後悔先に立たず。 ここは責任を取るつもりで俺が話をしていくしかない。 「まずは自己紹介にしようか。 お互いに名前が分からないと話もしにくいだろう」 「そ、そうですね」 有り難い配慮のお陰で、名前を交わし合う。 元生徒会長の名前は鈴西(すずにし)響子(きょうこ)。 目尻が僅かに吊り上がった鋭い双眸には、他者を寄せ付けまいとするオーラが滲み出ている。 「それで、何の用だ」 あまり動かさない口から出る言葉にも、冷たさが混じっている。 ノック事故もあり、やや気が立っているのだろうか。 無造作に並べた新聞を一瞥して、 「今日はとあるお話を伺いたく参りました」 まるで腫れ物に触れるように、響子元会長との会談が始まる。 「どうぞ。 訊きたい事があるなら言ってくれ。 ただ、私はもうすぐ帰るんだ。 手短に頼むぞ?」 「分かりました」 乾いた唇を舐めて、単刀直入に申す。 「俺が訊きたいのは、この新聞部が起こした不祥事についてです」 適当に一部を掴んで元会長に見せつける。 これはあまりに単刀直入すぎただろうか? 会長の眉がぴくりと動き、険しい顔に険しさが増す。 「......不祥事、か。 どうしてそうなったんだ」 「それはーー」 多目的室でのやり取りを、かくかくしかしが話す。 俺は話しながら気付いていた。 次第に険しさを増す表情は挙句、完全に俺から目を背けていた事を。
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