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墓穴を掘った事に動揺したのか、鈴西は軽く笑ってみせた。
「面白いな、君は。 確かに一年前の部活名簿を見れば「新聞部」は存在しているかもしれないな」
「では、新聞部の存在は容認するんですね」
「そうだな新聞部の存在は認めよう。 しかし私はこの新聞は知らない」
あっさり意見を変えてしまう鈴西に、不信感が募る。 俺が去年の選挙に関係していたら不信任票を入れていただろう。
鈴西の手に握られた最終更新の新聞を受け取り、表紙の次のページをめくる。
「新聞は知らない、ならここに記載されている生徒会長の言葉はどう説明するんですか」
校長の言葉の他に生徒会長の言葉も記されている。 この新聞が秋頃に更新が止まったのなら、それよりも以前に取材が行わなければならない。
タイミングにもよるだろうが、後期生徒会長の言葉になる可能性は低いのではないだろうか。
「だから、私は知らないと言っているだろう?」
「新聞部の存在は容認して、新聞の存在は否定するんですか」
三年生であり元生徒会長に対して言うのは失礼極まりないが、図太すぎる。
俺としては早々に真実を述べてくれた方が有り難い。
「私が知らないと言う以上、知らないんだ。 もうそろそろ時間だ。 今日はもうお引き取り願おうか」
しかしこのままでは引き下がれない。
まだ何かあるんじゃないかと新聞に手を伸ばしたとき、横から伸びてきた手が俺の肩に置かれる。
「セン、鈴西先輩の言う通り今日はここまでだ」
広太だ。 腕時計の文字盤をこちらに見せている。
見ると時刻は五時を少し過ぎたところ。 時間の経った感覚が無いほど話に夢中になっていたのか。
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