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たしかに、時間が無いなら今日は諦めるしかなさそうだ。
「また明日にでも来てくれ。 意見があるなら待っているよ」
気分は晴れ渡らないが、鈴西が明日も待ってくれると言うのなら言葉に甘えよう。
「考え直してきます」
広太は既に新聞を片付け始めている。
スツールから腰を浮かせ、何気なく生徒会室を見渡した。 鈴西との間で狭まっていた視界を、身体は窮屈に感じて無意識にそうさせたのかもしれない。
その行動により、俺はとある違和感に気付いたのだ。
そして違和感の正体はすぐに分かった。
室内を怪しげに見渡す俺を怪訝に思ったのか、鈴西が訊いてくる。
「何をしてるんだ」
「先輩、生徒会の活動時間は決められているんですか」
「? いや。 特には無いが」
「そうですか」
質問の割には素っ気ない返しに、鈴西の眉間にシワができる。
「それがどうかしたのか」
「もう一つ。 先輩は「自分はこうするんだ」と示唆するような行動を取りますか」
返答になってない返答に、嘆息しながら呆れた様子で答える。
「無意識のうちにするかもしれないな。 何を言いたいんだ」
「いえ、お気になさらず。 それと最後になりますが、先輩は腕時計を持ってますか」
「持っていない」
俺が頓珍漢な発言を繰り返した事が、これ以上なにを言っても無駄だと思わせたのだろう。 その返事はやけに素っ気なかった。
「分かりました。 それでは、また明日」
出る前に会釈程度に頭を下げて、生徒会室を後にする。
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