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その日も図書室のソファに身を預けて、読みかけの小説を読んでいた。
「ーー君、推理小説が好きなの?」
ちょうど最初の殺人が起きるシーンに胸を高まらせていたとき、不意に横から声がかけられる。
鼻白んだ俺は、声の主をじっと睨んだ。
睨まれた当人は「何かあったかな」というような涼しい顔をしていた。
「それ、クリスティね?」
そう訊かれて、見られてまずい物でもないのに思わず表紙を隠して小説を閉じた。 その行為が余計に興味を誘ったようで、
「いつもなに読んでるのか気になってたんだけど、まさか推理小説とはねえ」
「......何か問題でも」
「ん? 私はただ読書家の君を褒めただけだよ」
さいですか。
せっかくの読書だったが、横に居られると気になって集中できない。
少しでも読み逃したら後々の爽快感が削がれる推理小説なのだ。 あまり邪魔をしてほしくない。
黙り込んだ俺に意気揚々と声主は話を続ける。
「ね、他にどんなタイトルを読んだの?」
「どんなって......」
図書室の一角、推理小説が並べられている本棚を見つめながら思い返してみる。
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