一、消えた存在

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声主は慌ててカウンターに戻って鞄を担いだかと思うと、そのまま出て行くのではなく再び俺の方へ寄って来た。 「それじゃ、今日はここまで! また明日!」 俺の返事を待たずに、いや返事をするつもりはなかったので良かったのだが、声主は小走りで図書室を出て行った。 「何だったんだ」 怪訝にぼそりと呟いて、やっと訪れた静寂に再び小説を読み始める事が出来た。 ところが慌ただしく過ぎ去ったひと時のお陰で推理小説で重要な緊張感が無くなってしまった。 これはどう責任を取ってくれるだろうか?
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