>>起承転結の始まり

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>>起承転結の始まり

某年の十二月中旬某日。仕事関係の忘年会に参加することとなった。 冬とはいえ、あまり寒さを感じない、暖冬の年の師走だった。 この忘年会は、昼食会から始まる早い時間帯のスタート。そういう仕事関係の忘年会なのである。 早い時間に始まった一次会は十六時ごろには終了し、続いて仲のいい仲間たち三人とボクを含めた四人の一行が、二次会への場所へと移動する。そこは近くの駅から電車に乗って三つ目の駅だった。 一行の親分でもある岩さんの最初のお目当てはホルモンの店だ。しかし、お目当ての店は十八時開店で、尚かつ開店時間までは絶対に開けられないとのこと。必然的にボクたち一行はこの店のホルモンを諦めざるを得なかった。 仕方なくさらに商店街を歩くこと数分、ようやく探し当てた別の穴場的ホルモンの店の暖簾をくぐることになった。ボク的にはここのホルモンで充分に美味しかったし満足できた。大好きなコリコリもあったし。(コリコリとは牛ホルモンで大動脈のことである。) 四人揃ってナンダカンダでワイワイと話しも弾み、それぞれがまあまあの満足感をもって二次会は十九時前に終了した。 しかし、ボクも初めて彼らに同行しているわけではないので、過去の経験からいうと、この飲み会の一行がこれでお開きにならないことは予想できていた。やがて、予想通りに仲間たち一行は次の会場へと足を進め始めた。 そして、その瞬間こそが、この物語の幕が切って落とされた瞬間だったのである。 この仲間たちはいわゆるスキ者たちである。 これにノコノコとついて行ったのがボクの最初の運の尽き。それを見抜いていたかのように、空からはしとしとと雨が垂れ落ちていた。まるでボクの足を引き止めるかのように。 小生の名前はツンスケ。もちろん本名ではない。 いわれについては後日に明かすことになるかもしれないが、今の時点では特にこの物語のタイトルに直接関係がないので伏せておくことにしよう。 ボクの身の上をあらかじめ明かしておくと、妻と三人の子があり野球とグルメが好きな普通のアラフィフのおじさんサラリーマンである。仕事は農業関係だとだけしておこう。自分で言うのもなんだが、一般的な常識人だと思っている。多少変わっているとは言われるけれど。 この物語は、そんな普通の生活をしていたボクの身の上に急激に舞い降りてきた切ない恋の物語なのである。
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