プロローグ 再会

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ

プロローグ 再会

「自殺」というニュースが飛び込んできたのは、よく晴れた昼下がりのカフェテラスだった。 私は遅めのランチをとって、コーヒーのおかわりを注文していた。暖かな日差しにほどよい喧騒、目の前に広がる平和な光景とそれはあまりにもかけ離れていた。 自殺? 本当に? 思わず閉じたスマホの黒い画面に虚ろな顔が映っている。まぶたの裏に浮かんできたのは、中学の制服を着た彼女の姿だった。まだあどけない顔で笑ってる。自殺? 本当に? あれからもう十五年近くが経とうとしてるのに、記憶の中の彼女は中学二年の、十四歳のままだ。 あの頃の私達は四人グループで、何をするのも一緒だった。スマホどころか携帯も、ポケベルすらもってなかった時代、暇さえあればくだらない話をし、それでは足りずに交換日記までしていた……。 そうだ、交換日記! どこにしまっただろう。遠く実家に置いてきた卒業アルバムが並ぶ棚を、記憶の奥から引っ張り出す。そう、確かそこにある青いノート、びっしりと文字とイラストが詰まったあの……。 いつのまにか置かれていたコーヒーにおそるおそる手を伸ばす。カタカタと鳴るそれを持ち上げ、唇に触れた熱さに思わず顔が歪む。 連絡しなきゃ。震える手をなだめつつ、私はスマホをたぐりよせた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!