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「もういいよ。君はわからず屋だ」
「どうしてそんな風に言うの」
一緒に住んで暫く経った頃、ちょっとした事で口論をした。
普段なら、どちらからともなく謝って、仲直りできたのに。
互いに大きめの仕事を抱えていた頃というのもあって、心に余裕が無かった。
私も彼も、引っ込みがつかなくて。
でも、出て行くなんて事も言えなくて。
その日初めて、長方形のこたつで向かい合わせに食事を取った。
会話は無かったけれど、一緒に食べられただけで、あの時は十分だった。
◇◆◇
「おかえり」
「・・・・・・ただいま」
仕事から帰って、スーツのままこたつに入っていた私。
疲れて突っ伏していると、先に戻っていた彼が寝室から出てきて、声を掛けてくれた。
隣に静かに入ってくる彼に、私は無言のままだった。
「・・・・・・ごめん」
「・・・私も、ごめんなさい」
私の頭上に、謝罪の言葉が降ってきて、疲れも忘れて飛び起き貴方に習って謝った。
あの日から二週間ぶりに、私達は隣合わせでこたつに入った。
それから何度か、向かい合わせだったり、隣だったり・・・・・・と変化をつけながら、私達は冬の間そのこたつで暖を取った。
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