長方形のこたつ

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その後、何度も冬が過ぎて。 長方形のこたつの四辺が、友人で埋まることもあれば、互いの両親が入っていたり、そしてーーー 子供達が、入っていた事もあった。 みなそれぞれがこのこたつに入り、そして出て行った頃。 私達はまた、隣り合わせでこたつに入っていた。 「これも、長いこと頑張ってくれてるね」 「そうね。もう、何年になるのかしら・・・」 一度も壊れる事無く頑張ってくれたこたつを見ながら、貴方が言った。 傷やへこみも多くなっているけれど、その暖かさは変わらない。 「君とこうやって隣り合わせで入るのも、なんだか久しぶりな気がするね」 「そうね・・・・・・」 変わらず隣で微笑んでくれる貴方の笑い皺を見ながら、きっと私にも同じものが刻まれているのだろうなと嬉しくなった。 こたつに付いた傷の分だけ、皺も年齢重ねた私達。 けれどずっとあの時から、毎年の冬をこの長方形のこたつで過ごしてきた。 ーーーきっと、いつかは。 私か貴方の隣どちらかが、空いてしまう時が来てしまうのだろう。 こたつが先か、私達が先かは判らないけれど。 人にも、物にも、等しく終わりはくる。 「また来年、これを出すのが楽しみだね」 「そうですね」 少し前にあった、巣立った子供達からの嬉しい便り。 遠くない未来に、また新しい命がこの長方形のこたつに入り、可愛い笑顔を見せてくれるのかと思えば、止まらない時の流れも愛しく思える。 「でも暫くは、君と隣り合わせで入れるのを楽しんでおくよ」 肩を寄せ合い、微笑みながら貴方が零す。 「・・・そうですね」 私はそれに、いつかこのこたつに初めて入った時と同じ笑みを返し、今は細くなった貴方の足に、自分の足をくっつけた。 古くなったこたつの木目に、過ぎた年月への感慨と感謝を込めつつ、私達は今日もとなり合わせで、優しい暖かさを感じていたーーーー 終
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