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どうしてもこの差は埋まらないのであれば、同じ目線を持った人をパートナーにしなくてはならないのだ。
「ケイちゃんを、卒業します」
挙手をして、そう宣う私に、ケイちゃんは不思議そうに眼を細めたあと、
「いいんじゃない?」
と笑った。
やはり私が手を離せば、あっさりこの関係に終止符は打たれてしまう。
「……ありがとうございました、今まで」
「こちらこそですよ。こんなおっさんのお相手してもらって。」
そうやっていつも私を線引きし、子供扱いするところ、凄く嫌いだった。
「ようやく、サクの目が覚めたんだ、喜ばしいことだよ。」
「うん」
「サク。」
「うん」
「幸せになってほしい。」
そうやっていつも、優しい言葉で私の涙腺を緩くしてしまうところ、凄く嫌いだった。
「最後に懺悔していい?」
「なに?」
「初めて会ったとき、俺、カノジョいるっていったじゃん」
「うん」
「あれ、ウソ」
「ウソ!?」
「ごめんね。こうなるの、おじさんには分かっちゃってたから。
傷つけたくなくて、嘘ついちゃった。」
キャラメルスチーマー。いつものやつ。甘いのが好きな、ケイちゃん。
私の大学生活はケイちゃんを追いかけた4年だった。
何もかも知っているようで、何も知らなかった。
「旅行で大阪に行くことあれば、連絡してよ。飲みにでも行こう」
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