02.17歳、夏

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02.17歳、夏

【17歳、夏】 うだるような暑さの中、私はひたすら坂道を上っていた。 私以外にも制服の女子高生がわんさかいて、皆一方向に向かっている。 長い坂の上には、ちょっとした森のように自然が生い茂っている、大学があった。 オープンキャンパスのチラシが、電柱にひらひら張られていて、そのオレンジ色がやたら目につく。 来年からこの坂を毎日通うのだ、と、99パーセント指定校推薦の決まっている私は思う。 ようやく辿り着いたそこは、異空間のような熱気に溢れていた。 オレンジのハッピを着た大学生が笑顔でチラシと水をくれる。 模擬授業に出ようと時間を調べると、興味のある授業までには、まだ大分時間があった。 キャンパスを目的もなく歩いていると、オレンジ色のハッピのお姉さんに声をかけられた。 「こんにちはー、どこか探してますか?」 「あ、いや……、模擬授業までまだ時間があるので、ブラブラしていました」 「そっかー大学の話聞けるフリースペースあるから、来ない? 冷たい麦茶もあるよー。休憩がてら。」 「じゃあ、お言葉に甘えて……」 「その制服、T女だよね?」 「あ、はい!」 「私もT女出身なの、よろしくね!」     
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